中高生もホッとできる居場所、「茶べり場」を毎月開いてわかってきたこと。

この茶山台新聞の運営元である「団地ライフラボat茶山台」の代表を務めます、池田淳です。本業は社会福祉法人の代表をしています。


2019年度、茶山台団地の子供会を復活させてから、茶山台団地のこと中心ですが、様々なことに関わらせていただく機会が巡ってきました。その結果、住民さんだけでなく、街づくりの専門家や実践家の方、行政関係者、その他有識者の方々からお話をお聞きできたり直接会ってお話させていただくことができました。

貴重な出会い・経験を通じて、私は茶山台団地の中で【スペース何もしない場所(仮)】というコンセプトの居場所を作ってみたいと思うようになりました。それは、いわゆる第3の居場所(サードプレイス)の定義として言われる「家庭(ファーストプレイス)や職場・学校(セカンドプレイス)以外の、気軽に訪れることができる居心地の良い場所」のことです。
また、私自身の中学生時代、地域との関わりがどんどん薄れていった経験と、もし何かあったとき相談できる人っていなかった経験、そして子供会で活躍してくれていたジュニアリーダーとその友人たちの中学校入学後の様子(うまく登校できない。本人だけでなく家族ケアが必要な環境など)を知ったことから、中学生・高校生世代に【声】を発してもらい、集めることを目的とした居場所にもできないかとも思いました。
そんなの思いを2023年の6月、とにかくいったん形にしてみたのが、【茶べり場 – 地域の中高生のゆる~い居場所】です。集会所で主たる参加者であった当時14歳の中学2年生たちと晩御飯を食べながらおしゃべりする、ゆる~い居場所です。

現在毎月第3水曜日。晩御飯を食べてもよいし、食べなくてもよい。勉強してもよいし、しなくてもよい。来てもよいし、来なくてもよい。特にルールはありません、強いて言うなら終わったらまっすぐ家に帰ることぐらいです。2025年2月までに21回開催し、平均5人の中学生が参加してくれています。
毎回参加してくれる子もいれば、1回参加したきりの子、途中から来なくなった子、途中から参加してずっと来てくれている子、茶山台から引っ越したのに参加してくれる子など、一言に中学生といってもそれぞれは事情が異なるので、私を含めたオトナから新たな参加者を発掘することはせず、当事者として参加している中学生が「連れてきたい」とか「興味あって来てみたい」と言っている子は拒まないスタンスでしています。
初回はやや緊張しながら、カレーで子どもたちを迎えました。

ただただスマホを触り続ける彼らを見ても、どんな困りごとがあるのかはわかりませんでした。スマホを触るだけでなく、カレーを食べ、音楽を聴き、友人同士の会話に花を咲かせ、矢継ぎ早にあれこれマルチタスクをこなしている様子を見て、ただ驚きました。
それと同時に、もしかすると彼らにとってのサードプレイスのようなものがスマホ(SNS)の中にあるのかもしれない、私が思い描いていた【声】なんて、そもそも発する必要を当事者たちは感じていないのかもしれない……と思ったことを鮮明に覚えています。

場所を提供しているオトナたちとの話も、マルチタスクの一部ぐらいの感覚で、気になれば話す、気にならなければ何も絡んでこない。そんな「茶べり場」を何度か繰り返す中で、ぽろぽろ彼らのつぶやきが聞こえてくるようになりました。
いろんな家庭事情の子がいますが、母シングルで育てられた子から
夫婦喧嘩ってどんな感じなん?
と聞かれたとき、「そんなんないほうがいいに決まってるけど、何が気になるの?」と聞き返してその子が発した、
見たことないから見てみたい。
という返事にとても重要なことを教えられた気がしました。
私は本業で社会福祉業に携わっていますが、当事者である中学生の情報から 【困っている】を勘違いし、私の尺度で困りごとを解決しようとしていたようでした。当事者である彼らは彼らできちんと自分と向き合い、彼らの尺度で【困りごと】を抱えていたようです。もっと以前から私の受け止められない【声】を上げており、その答えをSNSから得ていれば当然スマホを手放せるわけもなく、だからこそサードプレイスとして機能するのだろうと思えました。
知らず知らずのうちに、【困っている】に違いないと勘違いして、何かしなければと思っていましたが、そもそものサードプレイスは「何もしなくても居れる場所」ということを思い出し、とにかく居心地の良さを追求するよう心がけ機会を重ねているうちに、私にとって最もうれしいエピソードが生まれました。
子供会のころから関わりのあり、面倒見がとてもよかった子ですが、中学に入った途端につまずきがあったようで、うまく学校行けていない様子でした。当然「学校は行かなあかん」とか、「勉強頑張れ」みたいなことは言いませんが、その子は自分で何かを乗り越え、なんと後輩にあたる子を「茶べり場」へ連れてきてくれました。
初めてきた後輩をかいがいしくお世話している姿も、後輩から慕われまんざらでもない感じで先輩面している姿もらしさ全開で、エラそうな言い方ではありますが、成長している姿を目の当たりにできたのです。「茶べり場」の影響だなんて思うことなどありませんが、知らず知らずのうちにその子だけでなく、関わりあった当事者の中学生にとって本当の意味でのサードプレイス(何もしなくてもいい居心地のいい場所)になれたのかもしれません。
今の「茶べり場」の常連さんは高校受験を経て、この4月から高校生になれそうです。また彼らにとってのライフステージが大きく変わる瞬間が訪れますが、彼らがどんな境遇になっても、あなたたちの住む団地には変わらずサードプレイスとしての居場所があるよというメッセージを伝えるため、これからもルールはなし、毎月第3水曜日、晩御飯を食べてもよいし、食べなくてもよい、勉強してもよいし、しなくてもよい、来てもよいし、来なくてもよい【茶べり場】を開け続けます。
そのうちに、彼らから「私たちで茶べり場やるよ」って言ってくれる日を待ち望みながら。