茶山台新聞

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茶山台の移動の強い味方、ちゃやまっくるの運行部長 西山和良さんが語る 支え合いのまちへの試行錯誤と今後の夢

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文=中村彩理(フリーライター)

丘陵地を切り拓いてつくられた泉北ニュータウンは、坂が多く、アップダウンの激しい町です。中でもここ茶山台は、校区内でも30m以上の高低差があり、茶山台小学校は堺市で最も標高の高い小学校となっています。この高低差により、最寄りの泉ヶ丘駅まで徒歩圏内の立地であるにもかかわらず、高齢者や体の不自由な方にとっては外出が困難な状況があります。

そのような課題を解決しようと、NPO法人団地ライフラボat茶山台が運行を始めたのが「ちゃやまっくる」。公道の走行が可能な「グリーンスローモビリティ」というゴルフカートのような電動車で、地域内の主要スポットをまわる移動支援事業です。地域のボランティアさんが協力し合って、昨年3月からテスト運行を開始し、本年4月の本格運行を目指して準備を進めています。

今回はちゃやまっくるのテスト運行の1日に密着し、運行部長である西山さんにこれまでのスタッフの奮闘と本格実施に向けての展望を伺いました。

ちゃやまっくるは、今日もゆく

現在ちゃやまっくるは、駅前のスーパーの10%オフセールに合わせて毎週月曜日にテスト運行中。1月から増便され、9時、10時、11時、12時の4回、同じコースを回っています。運転手と補助員の最低2名で運行し、お客さんは最大5名まで乗ることができます。この日は4名のスタッフがお手伝いをされていました。
走行に先立ち、補助員のスタッフから丁寧な注意事項が読み上げられ、いよいよ出発です。

グリーンスローモビリティには時速20km未満の制限速度があるため、ちゃまっくるは校区内をゆっくり走ります。
雨風をしのげるカバーもあり、雨の日や寒い日も安心です。温かい時期はカバーを外して穏やかな気候と景色を楽しむことができます。

この日運転手を務めていたボランティアスタッフの阪倉さんは、かつては劇団に所属し、大きなトラックで日本中を駆け巡っていたのだとか。パワーステアリングのないグリーンスローモビリティは、ハンドルも重く操作にコツが必要だといいますが、慣れた手つきでハンドルを切ります。

この日は初めて乗車されるお客さんも、やまわけキッチンから乗り合わせました。走り出すと、お客さんたちが「思ったよりスピード感があるね」「景色をゆっくり見られていいね」と声が上がります。

ちゃやまっくるが回っているのはこちらのコースです。

公社茶山台団地7棟集会所前を出発し、やまわけキッチン、近隣センター、医療センターやパンジョ近くのUR泉北茶山台二丁団地などをめぐり、同じコースを戻る、往復40分程のコースです。団地はもちろん、戸建てエリアも網羅しています。

停車スポットで時間調整が生じると、西山さんはすかさず車を降りて、道を歩く人にちゃやまっくるのちらしを渡し、PR。

西山さん:ちょうど歩いて坂を下りてきている方が来られたので、ぜひ利用してもらえればと思って。まだまだちゃやまっくるの存在を知らない人も多いので、周知に力を入れたいと思っています。チラシを見ただけでは、なかなか問い合わせの電話をしたり、乗車したりするのには勇気がいると思うので、4月の本格実施に向けて、ファンを増やしていきたいんです。

運転手募集中!

午後からは、数か月に1度開催されているちゃやまっくるの運転手講習会がありました。最終便の運行を終え、7棟集会所前に戻ってくると、西山さんは休む間もなく講師に早変わり。

ちゃやまっくるの運転スタッフになるには、普通自動車運転免許と、グリーンスローモビリティの操作についての1時間程度の講習を受講する必要があります。当初運転講習会には、メーカー担当者を講師に招いていたのですが、より機動力をもって講習が開催できるよう、西山さんはメーカーの本社のある静岡県まで赴き、操作講習ができる資格も取得したのだそうです。

西山さんと、もう一人の運行スタッフである四辻さんの2人が運転手としてスタートしたちゃやまっくるの活動は、講習会を重ねるごとに少しずつメンバーが増え、現在は登録者9名、常時4~5人のボランティアさんが活動に参加されるようになりました。

この日も新たに3人の方が説明会に参加し、「何かお役に立てることがあれば」など、思いを語っていました。

西山さん:今は仕事があるけど、落ち着いたら手伝いたいと登録してくださる方や、「9時10時の2便だけ」とできる範囲で協力してくださっている方もいます。

買い物難民の支援として始めましたが、担い手である運転手の皆さんが、町に貢献している実感をもって、楽しく活動できる生きがいづくりの場にもなればと思って取り組んでいます。実際、みんなでわいわい話しながら、励まし合って活動しています。

私はプレイヤータイプなので、つい自分で全部やろうとしてしまうのですが、スタッフ一人ひとりが課題の解決に向けて考え、みんなで意見を出し合っていける雰囲気をつくることを心がけています。

0を1にする魅力に惹かれて、運行部長に

本格始動に向けて、ちゃやまっくるを軌道に乗せるべく奮闘する西山さんですが、茶山台で暮らし始めたのは5年前。どういったきっかけでちゃやまっくるに関わることになったのでしょうか。

西山さん:結婚を機に堺にやってきました。最初は別のエリアに住んでいたのですが、賃貸で仮住まいのつもりだったこともあり、積極的に地域活動に参加することはなかったんです。5年前に茶山台に引っ越してきてからは、自分が腰を据えて暮らす町だという認識もあって、地域にもいろいろ関わっていきたいと思いました。
NPO法人SEINの宝楽さんや、NPO法人団地ライフラボat茶山台の池田さんと、地域のパパ友飲み会の「ダディーズバー」で知り合って、ちゃやまっくるの構想を聞いたんです。おもしろそうだなと思って、「なんでも手伝うで!」と言っていたのですが、池田さんからは運転手を取りまとめる「運行部長」の打診を受けました。私は実行部隊としてはお手伝いしたいと思っていたのですが、人生の大先輩の運転手さんたちを取りまとめるなんて、失礼があってもいけないし、お断りしようかと思いました。けれども、あなたしかいない!とうまく乗せられて(笑)

そうして始まったちゃやまっくるですが、テスト運行を続ける道のりは平坦ではありませんでした。

西山さん:今は、校区内を回るコースで巡回していますが、住民さんの本当のニーズは駅への送迎なんです。けれども、時速20km未満でしか走れないちゃやまっくるは、警察との協議でまだ駅前への乗り入れが実現していません。また、利用される方もやまわけキッチンのお客さんや、スタッフのお誘いで乗車される方がほとんどで、一見で利用される方は少ないのが現状です。

ただ、近距離をこまやかに回ることができるという利点もあります。たとえば、やまわけキッチンに行ってご飯食べられたらありがたいけど、坂を登るのがしんどい、という方など、ニーズのある人に知ってもらいたいと思っています。

思うようにいかない状況が続いても、テスト運行を続けてこられた原動力はなんだったのでしょうか。

西山さん:私は元々、立ち上げに関わるとか、0を1にするのが好きだったんです。仕事もスタートアップで起業しましたし、自宅の一部もDIYで作るなど、自分でつくり上げることに魅力を感じています。ご高齢の方が買い物に困っている。そうした課題を解決したい、そのしくみをつくるお手伝いがしたいとの思いでやってきました。
今は生みの苦しみです。失敗もありますし、批判もあるかもしれませんが、それは覚悟の上で、試行錯誤する中でしか味わえない体験があると思っています。結果的に買い物に困っている人たちの課題を解決していくことができれば嬉しいです。

本格始動に向けての、ちゃやまっくるの今後の構想はどういったものなのでしょうか。

西山さん:引き続き駅への乗り入れについてはNPO法人団地ライフラボat茶山台理事長の池田さんや、公社茶山台団地自治会長の宝楽さんなどが中心となって、警察や行政と調整して下さっていますが、私たち運営側としては、まずは校区内でできることをやって実績を積み上げていきたいと思います。

テスト運行中に、「乗っていたら気持ちいいわ」「お花見にいいね」と喜んで下さった方もいたので、桜の時期に、お花見便を出そうかという話もあります。また、選挙の投票所となっている茶山台小学校までは坂道が厳しく、投票に行くのが大変だというお声もあるので、選挙特別便も運行しています。昨年の参議院選、今年の衆議院選でも実際に運行しました。孫の運動会を見に行きたいというお声もあるので、運動会の日に小学校まで行く便もアイディアとして出ています。工夫しながら、喜んでもらえる運用を考えていきたいです。

関わり合い、助け合いを広げたい

試行錯誤を続けながら、奔走する西山さんに、茶山台の魅力と今後の展望について聞いてみました。

西山さん:茶山台は、駅徒歩圏内であるにもかかわらず、緑豊かなロケーションが魅力です。小学校も真面目で穏やかな雰囲気で、子育てにも適していると感じます。また、住民同士が関わり合う共生のコミュニティが、公社茶山台団地を中心に、できつつあります。今後はこうした茶山台の居場所の取り組みを校区全体に広げたいですね。

団地と、戸建てエリアでは価値観やライフスタイルが違うこともあるかもしれませんが、垣根なしに、助け合える町をつくりたい。その思いで、これまでも、単位自治会の会長やママさんバレーのコーチなどにも関わってきました。参加しているソフトボール部は一時はメンバーも減っていたのですが、少しずつ盛り上がりを見せています。そうした取り組みを重ねながら、老若男女みんなで子どもを育める町にしていきたいと思っています。


堺市では、交通網のないエリアや、駅から遠く離れたエリアへの乗合タクシーなどの移動支援の取り組みもありますが、茶山台校区は比較的駅に近い立地でありながら、高低差から高齢者の移動や買い物が難しい状況がありました。

そんな課題を解決するべく、西山さんをはじめとしたスタッフの皆さんが工夫を凝らし運行するちゃやまっくるは、行政や企業にはできない、地域ならではの工夫や夢が詰まっています。

やまわけキッチンなど、主要な地域活動や近隣センター、クリニックなどを網羅したコースは、出会いの場、ふれあいの場へのアクセスを可能にしています。また、お花見や運動会、投票場へのアクセスを保障できないかと、生活に密着したアットホームなアイディアを出し合っています。

何より、実際にちゃやまっくるに乗ってみると、まるで遊園地のアトラクションのようにわくわくしました。グリーンスローモビリティという耳慣れないカートは、ゆっくり走りながら、季節の移ろいや地域の様子を感じられます。また運行に関わる人たちの思いを感じられ、心が温まるひとときでした。ぜひたくさんの方に利用していただき、地域の中でお出かけするきっかけにして欲しいと強く思いました。


<ライタープロフィール>
中村彩理 Nakamura Sairi
南大阪で生まれ南大阪育ち。長年堺で働き、結婚を機に堺市で暮らし始める。現在は小学生の子育て中。2024年からライターとしての活動を開始。福祉関連の記事を執筆するとともに、noteなどで自身の体験も発信している。

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