茶山台新聞

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「介護は一人で抱え込まなくていい」支え合いの場をつくる、藪中達朗さんの想い

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堺市南第3地域包括支援センターで、センター長及び主任介護支援専門員として活動する藪中達朗さん。地域の高齢者やその家族の相談に乗り、支援を行う仕事を続けて20年以上になります。

「実は、私、生まれたのは茶山台なんです。」

そう話す藪中さんは、0歳の時に茶山台で生まれ、その後、岸和田へ引っ越したといいます。

藪中さん:だからでしょうか。茶山台という場所には、どこか懐かしさを感じます。たまたまこの仕事をして、たまたまこの地域を担当することになりましたが、結局、自分のルーツがある場所に戻ってきたのだなと思います。

運命のように、この場所に戻ってきた藪中さん。今、この地域で、福祉の最前線に立っています。

福祉の道を選んだのは、祖母の在宅介護がきっかけでした

藪中さんが福祉の道を志した背景には、高校時代の祖母の在宅介護の経験があります。

藪中さん:高校生の頃、祖母がパーキンソン病を患い、実家で一緒に暮らすことになりました。でも、当時の家の中はピリピリしていましたね。両親は介護に追われ、祖母自身も慣れない土地でどう過ごせばいいのかわからない様子でした。

介護が必要になったことで、家族の生活が大きく変わり、「介護をする側」だけでなく、「介護を受ける側」にとっても負担が大きいことを、藪中さんは身をもって知りました。

藪中さん:介護は、家族の誰かが頑張ることで成り立つものではなく、支え合う仕組みが必要なのではないかと感じました。そう思ったことが、福祉の仕事に興味を持つきっかけになりましたね。

その後、桃山学院大学の社会学部に進学。社会調査を学ぶ中で、「これから日本は高齢化が進み、介護を支える仕事がますます必要になる」と実感し、社会福祉士の資格取得を目指した藪中さん。見事合格し、晴れて社会福祉士として、福祉の現場へ出ていくこととなります。

福祉の仕事は、並大抵のメンタルではできません

大学卒業後、社会福祉法人よしみ会の老人ホームに就職。ここは、保育園と老人ホームが併設されており、「お年寄りと子どもが一緒に過ごす」という新しい試みに興味を持ったことが、就職のきっかけだったといいます。

最初のお仕事は、デイサービスのスタッフでした。

藪中さん:やったことがないからこそ、やってみたかったという気持ちでしたね。デイサービスの現場で、お年寄りがどんな風に過ごしているのか、どんな支援が必要なのかを学びました

その後、一旦は事務職へ。しかし、福祉の仕事は、制度だけでなく「人と向き合うこと」が何より大切だと改めて実感します。

そんな時、新たに立ち上がることになった「在宅介護支援センター」(現在の堺市南第3地域包括支援センターの前身)のスタッフとして声がかかりました。

藪中さん:介護を支える仕組みがもっと必要になると感じていた時期だったので、これはやるしかないと思いました

しかし、福祉の仕事は決して楽なものではないと、藪中さんは率直に話します。

藪中さん:正直に言うと、しんどい仕事です。相手の人生に関わる仕事なので、精神的に追い込まれることもありますし、思うように支援ができず、もどかしい気持ちになることもあります。それでも、もう長くやっていますし、自分にはこの仕事が合っていると思っています。だからこそ、これからも頑張っていきたいし、次の世代にも、この仕事の魅力や意義を伝えていかなければいけないと思っています。

「地域包括支援センター」ってどんな場所? どんな時に使えばいいの?

堺市南第3地域包括支援センター(通称「南第3包括」)は、地域の高齢者やそのご家族を支えるための相談窓口です。

藪中さん:例えば、『親の物忘れが増えてきたけど、どうしたらいいのか』『介護のことで誰かに話を聞いてほしい』『退院後の生活が不安』といった悩みがある時に、気軽に相談してほしいですね。多くの人が『こんなことで相談していいのかな?』と思ってしまいますが、実はほとんどの悩みが、みんなが経験することとつながっています。だからこそ、まずは気軽に話してみてほしいです。

茶山台団地はラッキーですよ

藪中さんは、取材の中で何度も「茶山台団地の人たちは、ラッキーですよ」と口にします。

藪中さん:この団地には、自然と住民同士が支え合う文化があります。介護が必要になった時、まわりに助けてくれる人がいるかどうかで、負担は大きく変わります。茶山台には、すでに『助け合いの仕組み』が根付いているんです。

その仕組みのひとつが、「実行会議」。この会議は、月に一度、団地ライフラボや自治会長、地域の関係者、専門職が集まり、住民さん一人ひとりに寄り添った話し合いが行われる場です。

特に、「ウェルビーイングプラン」では、住民さんの「得意」や「好き」を活かし、キラリと光る瞬間を記録することを大切にしています。これは、単なる支援ではなく、住民さんが自分らしく生き生きと暮らせる環境をつくるためのものです。また、介護や生活支援が必要な方に向けた見守りの仕組みが話し合われることもあります。

藪中さん:支援を必要としている人が、まわりに助けを求めなくても、地域全体で『さりげなく見守る』ことができる仕組みがある。それが、この団地のすごいところです。これだけの支え合いがある地域って、なかなかありません。だからこそ、こうした仕組みをもっと活かしてほしいんです。困ったことがあれば、ひとりで抱え込まずに、周りを頼ってください。その一つに、南第3包括も相談窓口として利用してもらえればと思っています。

まずは、話してみることから始めてみませんか?

藪中さんは、「相談に来た人が、少しでも気持ちが軽くなって帰れること」を大切にしていると話します。

藪中さん:福祉って、相手が『相談してよかった』と思えることが大事なんです。話したことで少し気持ちが楽になったり、解決の糸口が見えたり。それだけでも、相談する意味は十分にあると思います。ちょっとしたことでも構いません。『こんなこと聞いてもいいのかな?』と思うくらいの相談が、実は一番大事な相談だったりします。まずは相談に来て、話してみることから始めてもらいたいですね。

そう語る藪中さんの言葉からは、「相談する」という行為そのものの大切さを、改めて実感しました。

私たちは普段、何かに悩んだとき、「こんなことで人に頼っていいのかな?」と考えてしまいます。特に介護の問題は、「家族で解決しなければ」「私が頑張らないと」と、自分一人で抱え込んでしまうことが多いのではないでしょうか。でも、藪中さんの話を聞いて、「福祉は、支えを求めることで成り立つものなんだ」と気づきました。

南第3包括は、介護の専門家がいる場所でありながら、決して堅苦しい相談窓口ではありません。「なんとなく不安だから話を聞いてほしい」「まだ介護は始まっていないけど、今後のために知っておきたい」そんな軽い気持ちで訪れてもいいのだと思います。

「まずは、話してみることから始めてみませんか?」

藪中さんのこの言葉は、茶山台のやさしい見守りの輪に加わり、誰もが安心して暮らせる地域をつくっていく一歩に繋がっていると感じました。もし、おひとりやご家族だけで悩んでいたり、これからどうしようと困っている時には、気軽に南第3包括に足を運んでみてください。

この記事を書いた茶山のひと

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まつやまちなみ団地ライフラボat茶山台

NPO法人団地ライフラボat茶山台のコーディネーター。鳥取県出身。大阪の人たちの陽気で明るい雰囲気に惹かれ、20代から上阪。その後、千葉県・宮崎県と場所を転々としながら100人シェアハウスで暮らし、出産と同時に30歳で大阪に戻る。ひょんなことから茶山台団地に出会い、緑の多さやコミュニティがある豊かさに惚れ込んで住民になる。「団地=大きなシェアハウス」と自分なりに定義し、そこに住む人たちとの交流や温かなつながりを大切にしながら暮らしている。

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