茶山台新聞

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「福祉は、ふだんの暮らしのなかにある」中光萌那さんが語る、社協の役割とは

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「社会福祉協議会(以下、社協)」という言葉を耳にしたことはありますか?

地域に根ざした地域福祉の推進を図ることを目的とする団体として、社会福祉法に基づき全国的に設置されている社協。しかし、その活動内容は意外と知られていません。「困ったときに相談する場所」と思われがちな社協ですが、実は“誰もが暮らしやすい地域”をつくるために、普段からさまざまな活動を行っています。

今回お話を伺ったのは、「日常生活圏域コーディネーター」として社協で7年間、茶山台を担当している中光萌那(なかみつ もえな)さん。 社協がどんな場所なのか、そしてそこで働く人たちがどんな思いを持っているのか、お話を伺いました。

「地域の“つなぎ役”として」社協の役割とは?

「社協の仕事って、具体的にどんなことをしているんですか?」

そう尋ねると、中光さんは少し考えてから、こんなふうに答えてくれました。

中光さん:すごくざっくり言うと、地域の人と、地域にある支援をつなぐことが私たちの仕事です。

たとえば、生活に困った人がいれば、行政の支援や地域のボランティア団体へ。

高齢者の一人暮らしが増えていれば、見守り活動や健康体操の場を。
子どもたちの居場所が必要なら、子ども食堂や地域イベントを立ち上げる。

中光さん:何か困ったときに、『どこに相談すればいいのかわからない』ということ、よくありますよね。そんなときに“まず話を聞く”のが社協の役目です。

また、地域での「ちょっとしたつながり」を増やすことも、社協の大切な仕事のひとつです。

中光さん:地域のつながりっていうと、なんだか大げさに聞こえるかもしれません。でも、すれ違ったときに『最近どう?』って声をかけることも、立派な地域活動なんですよ。

まずは気軽に関わること。そこから、少しずつ「地域でできること」が見えてくるのかもしれません。

「“福祉”は特別なものじゃない」中光さんが社協で働く理由

中光さんが社協の仕事を選んだのは、「福祉は、誰か特別な人のためのものではなく、みんなが“いつも通りの暮らし”を続けるためのもの」だと気づいたからでした。

中光さん:もともと教育大学で学んでいて、福祉の専門ではなかったんです。でも、大学で児童虐待について研究するうちに、子どもを支えるには、子どもだけを見るのではなく、その周りの環境を整えることが大事ということに気づいて。そこから、地域全体を支える社協の仕事に興味を持ちました。

社協に勤めて7年。茶山台での活動を振り返り、「やっていてよかった」と思う瞬間について聞いてみました。

中光さん:たとえば、区役所や社協の事務所にいると、『ちょっと顔見せに来たよ』と訪ねてくれる方がいるんです。困ったことがあるわけじゃなくても、『何かあったら、ここに来たらいいんやな』と思ってもらえていることが嬉しくて。

一方で、社協の仕事の難しさも感じているそうです。

中光さん:地域の課題って、『こうすれば解決する!』っていう正解がないんですよね。支援の仕組みを作っても、それが地域の人にとって本当に“使いやすい”ものになっているかどうか、常に考えなきゃいけない。

社協の役目は、あくまで“地域の人が主体となって動ける仕組みを整えること”。そのためには、ただ支援を提供するだけではなく、「どうすれば地域の人が自然に関われるようになるか」を考え続ける必要があります。

「茶山台ならではの福祉のかたち」ー支援を「選べる」環境をつくる

茶山台には、ほかの地域とは少し違った特徴があります。

 中光さん:茶山台では、福祉委員会・自治会・民生委員・団地ライフラボさんのようなNPO団体それぞれが活動しているんです。茶山台では多様な主体者の活動が多く、「どんな形で関わるかを地域住民自身で選べる」のも特徴です。たとえば、健康体操ひとつとっても、『福祉委員会が主催するもの』もあれば、『団地の自治会がやっているもの』、『URが開催するもの』もあります。それぞれが同じ健康体操ではあるけれど、どの取り組みに参加するのか、どこが居心地が良いかは、行く方が自由に選んでいい。ひとつではなく、いろんな選択肢があるのが、茶山台のいいところですね。

社協としてはそのような団体の“横のつながり”を生みだすことが重要だと感じています。」

こうした取り組みのなかで、中光さんが今後力を入れていきたいのは、「地域住民による支援をもっと身近なものにすること」。

中光さん:地域住民の支援って、『なんか重鎮がいそう』とか、『役を任されそう』って思われがちで、なかなか新しく入ってくる人が少ないんです。(笑)でも、実際はそんなにハードルが高いものじゃなくて、『ちょっと隣の人を気にしてみる』『地域の掲示板を眺めてみる』くらいの気持ちでいいと思っています。少しの行動、少しの気づきが、大きな目で見れば、地域を変えるきっかけになるんです。

「支援は、必要なときだけのものじゃない」社協と地域の未来

最後に、中光さんに「これからの社協と地域の未来」について聞きました。

中光さん:パッと言われて思い浮かぶのは、”ちょっと困ったときに相談できる人がいる”、“気にかけてくれる人がいる”という状態を地域全体でつくることではないかなと思いますね。私たちは、支援の場所を増やして、つながるきっかけを提供することはできるけれど、そこの関係づくりに関しては、地域の方のつながりや、そこにきてくださる方との会話をひとつずつ積み重ねるしかありません。だからこそ、これからの地域の未来には、普段から『あの人、大丈夫かな?』って気にかける・気にかけられる関係を作ることが何よりも大切なことではないかな、と思っています。

また、中光さんは続けて語ります。

中光さん:今は情報が溢れているから、自分で何とかできると思うかもしれません。若い世代の方は特にそうですよね。でも、電波がなくなったり、生死に関わる場面になったとき、結局頼れるのは“近くにいる人”なんですよね。 だからこそ、自分のことを知ってもらうこと、相手のことをちょっとだけ気にしてみること。その積み重ねが、暮らしやすい地域を作るんだと思います。

「福祉は、特別なものじゃない。」

社協は、そんな思いで、これからも地域に寄り添い続けます。

この記事を書いた茶山のひと

プロフィールページ

まつやまちなみ団地ライフラボat茶山台

NPO法人団地ライフラボat茶山台のコーディネーター。鳥取県出身。大阪の人たちの陽気で明るい雰囲気に惹かれ、20代から上阪。その後、千葉県・宮崎県と場所を転々としながら100人シェアハウスで暮らし、出産と同時に30歳で大阪に戻る。ひょんなことから茶山台団地に出会い、緑の多さやコミュニティがある豊かさに惚れ込んで住民になる。「団地=大きなシェアハウス」と自分なりに定義し、そこに住む人たちとの交流や温かなつながりを大切にしながら暮らしている。

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