茶山台新聞

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おせっかいが安心感につながる。茶山台としょかん・としょ係の藤井千秋さんが語る、地域に根ざした子育てと支え合い。

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藤井さん:茶山台団地に住むことを決めた一番の理由は、子育てに適していると感じたことでした。駅まで徒歩で行けるし、公園も多い。夫のご両親とも程よい近さにあって、安心して暮らせそうだなって。

そう語る藤井千秋さんは、20歳のときに茶山台団地に移り住みました。3人の子どもたちを育てながら、地域の一員として少しずつ顔見知りを増やし、気がつけば地域の人々との関わりが日常の一部となっていました。

 

育児への想いと、孤独を乗り越えた経験

藤井さんは、もともと子ども好きで保育士資格を持っていることもあり、出産前は育児に自信があったそうです。しかし、現実は想像以上に大変で、孤独感に苛まれる日もたびたびあったといいます。

藤井さん:最初は「自分一人で大丈夫」って思っていたんですけど、いざやってみるとわからないことばかりで。子どもはどんどん成長するし、気がつけば自分の親も忙しくて、頼れる人もいなくて、本当に孤独で……「一人で全部やらなきゃ、頑張らなきゃ」って感じる時期がありました。

そんな時、藤井さんは思い切って地域の「子育て広場」に足を運び、他の母親たちと交流を持つようになりました。

藤井さん:子育て広場に行って、自分だけじゃないんだって思えたんです。周りの人がどれだけ頼もしいかもわかって、少しずつ気持ちが楽になっていきました。もし行ってなければ、きっとまだ一人で悩んでいたと思います。

こうした経験が、今では地域活動に積極的に参加する藤井さんの原点となっています。

 

茶山台で築いた役割と変化

育児に専念していた6〜7年の間、藤井さんは3人目のお子さんを保育園に預けてパートを始め、保育士としてのキャリアも積んできました。子どもたちが成長し、地域活動に関わる中で、団地の集会所を利用してつくられた「茶山台としょかん」や、団地のお惣菜屋さん「やまわけキッチン」といった居場所も利用するようになりました。

藤井さん:うちの子たちが、「茶山台としょかん」や「やまわけキッチン」でいろんな大人たちと知り合いになる様子を見ていて、より茶山台での繋がりを感じるようになりましたね。

自らも地域の活動に関わることで、周囲に見守られている安心感を得られたと藤井さんは語ります。

藤井さんは、茶山台で暮らす中で、何度も隣人との助け合いを経験してきました。ある日、家の網戸が閉まらなくなってしまい、困ってお向かいさんに助けを求めたことがあるそうです。

藤井さん:網戸がどうしても閉まらなくて、恥ずかしいなと思いつつ、お向かいさんに相談してみたらすぐに手を貸してくれて、直してもらったんです」

逆に、1階に住む住人さんが、水道の元栓が閉まらなくて困っている様子を見かけた時、藤井さんはすぐに手伝いに駆けつけたそうです。

藤井さん:一緒にいた息子と「ちょっとやってみましょうか?」って声をかけました。それで、無事に元栓を閉めることができて、「よかったですね」って言って別れたんですけど、後でその方からスイカをもらっちゃって。「人を助けたらスイカになった!」と、息子も喜んでいました。

すぐに相談できる人が身近にいることが、安心感に繋がっていると藤井さんは話します。そして、こうしたエピソードが日常的にあるのが、茶山台団地なのです。

 

としょ係としてのやりがい

そして、2022年からは「茶山台としょかん」のとしょ係を務めるようになった藤井さん。週に数回、シフトで担当しながら図書の管理や、地域の方へのスマホの悩み相談なども行っています。

藤井さん:どこかに属して働くことに正直とても疲れていて(笑)。仕事をしないでいいなら、もう働きたくないなって思っていたんです。でも、子どもたちも大きくなってきて、ちょっと今までと違う形で働いてみる、そんな関わりもいいかなって。

これまでは保育士として、小さな子どもたちと関わる機会が多かったんですが、としょかんにくる子どもたちは小学生で、また違った面白さを感じています。純粋で、話も通じて、とにかく話してると面白いんですよね。自分の子育てだけじゃなく、こうして地域の子どもたちと関われるのも楽しいです。

特に最近は、スマホの基本的な操作の悩みを相談されることも増え、感謝されることが嬉しいと藤井さんは言葉を続けます。

藤井さん:スマホのちょっとしたことを教えてあげただけでお礼を言ってもらえるんですけど、「ありがとう」って言われるのって本当に嬉しいですね。私ができることで誰かの役に立てるっていうのが、思っていた以上にやりがいになっています。 

 

安心感を支える茶山台の生活

今ではすっかり茶山台団地の一員となった藤井さんは、茶山台での生活を楽しむためには積極的に知ってもらうことが大事だといいます。

藤井さん:まずは、自分から地域に出て行って、顔を知ってもらうことが大事だと思います。そうすれば、自ずと自分も地域の方に見守られている安心感が出てくるはずです。最近では、高齢者の一人暮らしの方も増えているので、地域全体で支え合っていくことが本当に大事。やまわけキッチンみたいにみんなが集まる場所がもっとあれば、もっと気軽に助け合えるようになるんじゃないかなと思います。

 

住民が見守る温かい地域づくりを目指して

としょ係をしながら3人のお子さんを育てる。そんな活動的な藤井さんにインタビューする中で私が特に印象的だったのは、「地域に見守られるために、自ら行動していくことの大切さ」です。

道で出会う人への挨拶や、なんだか困っていそう? と思う人に声をかけたりする小さなおせっかい。その一つひとつが巡り巡って、自分も誰かに見守られる温かな繋がりを生んでいくのだと感じました。

藤井さんのように、私たちもまずは一歩踏み出し、周囲に小さな思いやりを届けていけたら、地域にはもっと優しい風が吹くのかもしれません。この記事が、読んでくれたあなたの一歩の後押しになることを願っています。

この記事を書いた茶山のひと

プロフィールページ

まつやまちなみ団地ライフラボat茶山台

NPO法人団地ライフラボat茶山台のコーディネーター。鳥取県出身。大阪の人たちの陽気で明るい雰囲気に惹かれ、20代から上阪。その後、千葉県・宮崎県と場所を転々としながら100人シェアハウスで暮らし、出産と同時に30歳で大阪に戻る。ひょんなことから茶山台団地に出会い、緑の多さやコミュニティがある豊かさに惚れ込んで住民になる。「団地=大きなシェアハウス」と自分なりに定義し、そこに住む人たちとの交流や温かなつながりを大切にしながら暮らしている。

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